フォトグラファー仁木岳彦のイタリア日記

レンジファインダーカメラの軽み

仁木 岳彦
上智大学新聞学科卒。旅の途中、イタリアにただならぬ縁を感じ、2000年からミラノ在住。撮影対象は興味の赴くまま、テーマはむしろ神々しい光の空気感。

久しぶりに、お洒落なカメラがマーケットに
出て来たなあと驚いたのが、フジフイルムの
レンズ交換式のデジカメ、Xシリーズ。

「いやあ、カッコ良いカメラだしてきましたね」と、
フジフイルムのミラノの人と話していたら、
なんと貸してくれる事に。フォトグラファー冥利に
つきます。Grazie mille!!!

カメラって、基本、ちゃんと動作して、綺麗に写れば
問題ないんすが。カメラに憧れはなく、写真を撮るのが
好きなだけで、、、フォトグラファーが写真を
撮っている姿が、カッコ良いと思った事すらないんすよね。
むしろ、一眼レフで良い構図探して奇妙な姿勢で
撮ってる感じなんかは、むしろカッコ悪いって思ってます。
でも、撮った写真のイメージで人を感動させられれば、
良いじゃないの? なんて開き直ってるわけで。。。
まあ一眼レフ自体が、そんなに見栄えのする
物体ではないと思っているので、半分諦めかもしれませんが。。。

ただ、さすがにキャパなんかが、戦場でライカっぽい
小型のカメラを掲げている姿を昔の写真で見たりすると、
さすがにカッコ良いわけで。。。ですから、
このフジのレンジファインダーカメラの見ための良さは、
「最高!」と思ってしまうんですよね。
しみじみとカメラ自体を眺めたり、いつでも
持ち歩きたくなってしまいます。

ところで、ライカ以前のカメラというのは、
フィルムもカメラ自体も大きく、沢山コマが撮れるものでは
ありませんでした。ライカの革命的なところは、
当時の映画用の小さなフィルムを、写真用のカメラに
つめたこと。それでカメラのサイズを大幅に小さくできたので、
機動性が飛躍的に高まって、コマ数もたくさん
撮れるようになったんですよね。それでキャパなどの
ように戦場にもフォトグラファーが行くようになったり、
カルティエ・ブレッソンのようにドキュメンタリーの
スナップの名手がスターになっていったわけです。
このライカの規格は、世界中のカメラメーカーが
真似したわけですが、何と言っても、この小振りな
レンジファインダーカメラの発明なしには、
時代の証言者としての「報道写真ムーブメント」は
なかった事でしょう。

その後、ペンタプリズムを使った一眼レフカメラの
精度があがってきて、その画像の正確さに
フォトグラファーが流れてしまい、基本的には
僕も含めて殆どのフォトグラファーは、
一眼レフ方式のカメラを使っています。そして、
その正確さを高めるためか、ボディーも巨大化してます。
そんなカメラを使っていると、フィールドで
使うにしても「被写体と対峙して、じっくり構えて
入念に撮る事に勝負をかける」なんていう部分に
ロマンを感じてしまうわけですよ。でも、みなさん、
正直、持ち歩くには少々重くないですか?
一眼レフを使うプロの間では、完全にライカ時代の
「軽み」が忘れ去られてませんかね?

そんな疑問に完全に答えてくれたのが、このフジの
Xシリーズ。ついつい、外に持ち出してしまうのです。
軽ーい気分で、街中スナップ。じっくり構えて
撮るのも良いけど、軽い気持ちで、バッシャって
一瞬芸で撮ったって、良いんじゃないの? という気分に
なってきます。道端のスナップで、とっさに人に
カメラを向けても、一眼レフ程は目立たず、みんな、
あまり気にしてない感じ。往年のストリートスナップは、
そんな小振りなカメラの特性によるところも
あるんじゃないかなあ???

「カメラなんて、なんでも良い」などと言う台詞も
言ってみたいですが、実際的には、撮ってる時の気分も、
撮れる写真も、カメラで随分と変わるもんですね。
ビオラとバイオリンで出る音が違うようなモノなんじゃないかな?

ミラノっ子にも随分、話かけられました。
「えっ、そのカメラ何?」「プロっぽい、でもなんか
昔のカメラみたい!」明らかに普通のコンパクトカメラとは
違う風貌、そして一眼レフより、圧倒的に小さいのに
作り込まれた感じが、お洒落さんのファッション
アイテムとしてのお眼鏡にもかなっている感じ。

まあ、カッコ良くても写りが悪いなら、意味が
ないのですが、、、なんと一眼レフと同レベルに
写りが良い。暗所にも強く噂通りに非の打ち所のない絵。
それもそのはず、センサーサイズはコンシューマー用の
一眼レフなどと同じでAPS-C。そう、そのぐらいあると、
印刷媒体で仕事する時や、大きく引き延ばす時も
安心なサイズなんすよね。レンズ交換もできて、
うまく使えば、一眼同様の背景ぼかしの絵も撮れます。
元々、プロ用のスタジオ中判カメラをつくっていた
フジですし、長年フイルムを作ってきた会社でも
ありますから、出来上がりの絵、色を妥協する事は
ないのでしょう。実は、ここ数ヶ月の、
「イタリア日記」の写真は、すべてこのカメラで撮りました。

一眼に比べて劣るのは、動作が遅く、連射が
出来ない事。ま、言って見れば、フィルムを入れた
昔のライカのタイミングでシャッターを
押さなくてはならないんですね。初めて使った
デジタルファインダーというのも、まったく
問題なかったすよ。使ってみると、覗き穴に
デジタルスクリーンがある感じも悪くない。
ピントの山も見えるし、出来上がりの絵も
想像しやすいですしね。結局、切り替え可能な
光学ファインダーは一度も使いませんでした。

ポートレートは、なんか昔の木村伊兵衛っぽい
軽い感じになりました。どういうわけか、
このカメラだと一眼レフほどには、じっくり構えて
被写体と対峙していられないのですよ。それで、
なんとなく盗み撮りっぽいノリになるのでね。

正直、iPhoneなどスマートフォンで撮る
写真のクオリティーが、コンパクトカメラに
肉薄してしまっている今。。。レンズとセンサーが、
一眼レフと同レベルのクオリティーで、
軽みのある扱いができるレンジファインダーカメラ、
正にドンピシャな香りがしますが。。。

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