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2017.12.11

腕時計デザインの常識を覆した、ルイ・ヴィトン「タンブール」の魅力とは?

誕生15年目を迎え、いまや世界的人気を博すルイ・ヴィトンのウォッチコレクション「タンブール」。人々を魅了し続ける秘密を、高級腕時計専門誌『クロノス日本版』編集長・広田雅将氏にたずねた。

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写真/照内 潔 文/福田 豊

ルイ・ヴィトンの初の本格的ウォッチコレクション、タンブールがデビューしたのは2002年。以来、タンブールはルイ・ヴィトンのみならず、時計界を代表する名作へと成長し、世界的人気を獲得。誕生15年目である今年の2017年には、ケースデザインの異なるシリーズが加えられるなど、さらなる進化を遂げつつある。

では、そんなタンブールの魅力はなにか。高級腕時計専門誌『クロノス日本版』編集長・広田雅将氏と、LEON.jp編集長・前田陽一郎が対談を行なった。
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誕生15年目の今年=2017年に初めて登場した新しいケースデザイン。これまでの膨らんだケースサイドとは真逆の内側に凹んだフォルムなっている。
前田
「タンブールが登場したのは、僕がLEONに入るちょっと前ぐらい。初めて見たときは『また、変わった時計が出てきたな』と思ったんです。でも、15年が経ったいまになると、これはタイムレスなデザインなのかな、と。実際、友人が2006年ごろに買ったタンブールをいまも着けていて、つい先日それを見たとき、改めて格好いいと感じたんですね。タンブールって、登場したときには、時計界ではどんな評価だったんですか?」

広田
「正直、誕生当初の評価は、さほど高くありませんでした。僕もそのひとりで、というのも、あのケースって変わってますよね。下の膨らんだお餅のようなかたち。実はあれ、本来はやってはいけないデザインとされ、これまでに類を見ないものなんです。ところが、よくよく見直すと、とてもよくできている。タンブールのケースは時計デザインにおいて画期的であることに気づいたんです」

前田
「おっしゃるとおりに、タンブールのケースは変わっていますね。で、その変わったケースのデザインのどこに魅力の根源があるのですか?」
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タイムレスなデザインの鍵はどこに

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2002年のファーストコレクション以来、ほぼ変わらずに作られ続けている定番モデル。タンブールの魅力の凝縮した1本だ。「タンブール オトマティック クロノグラフ ブラウン」自動巻き、SSケース(41.5mm)、100m防水、アリゲーター ストラップ、79万2000円/ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)
広田
「時計のケースには、そもそも二律背反のようなところがあるんです。ケースが薄いと装着感はよいが、目立たない。そこで目立つように立体的にすると、装着感が悪く、横からの見た目が間延びする。時計界はこの相反する難題と常に戦い続けてきたんです。

そしてその矛盾を打開し、薄い時計に立体感を盛り込むことに成功した最初の例が、おそらく1972年のジェラルド・ジェンタによるロイヤル オークのデザイン。ベゼルを立体的にすることでケース全体を立体的に見せました。

ところが1980年代の終わりごろになると今度はケースサイドを立体的にする方法論が登場します。それは主に使用されるムーブメントが厚くなったから。通常、ケース厚はムーブメント厚の約2倍といわれます。約8mmもの厚みのムーブメントを収めるために生じた間延び感を解消するには、ケースサイドを立体的なデザインにせざるを得なくなったのです」

前田
「間延び感というのは? 時計のケースは基本的に、ベゼル、ケース本体、裏蓋、の3層構造ですよね。1980年代以降は、そのケース本体の、中央部分が膨らんできたのですか?」
広田
「そういうことです。フランク ミュラーのコンプリケーションがその代表で、側面にコインエッジを使うことでケースサイドに立体的な表情を持たせています。もう一例が2005年に誕生したウブロのビッグ・バン。多層構造のケースが側面に表情をつくり、間延び感を解消しています。

そしてそんなふうにケースの間延びを立体的に見せようという動きのなかで、スイスの時計デザイナーたちが気づいたのが『プロファイル』という概念。LEON的ないいかたをすると、袖口から見える『チラ見せ』、つまり横からの表情です。

"横からの見た目も時計を認識させる重要なツールになり得る"ということに気付いたデザイナーたちは、以降ケースサイドを立体的なデザインにすることに注力するようになります」

前田
「つまり時計は正面からのデザインがベースにあり、ずっとそれに注力してきた。しかしそれが近年になって、横からのデザインも重要視され始めたということですね。確かに、タンブールは横からのデザインがとても印象的です」
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時計デザインの難題を打破した"奇妙な"デザイン

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ケースサイドは下側の膨らんだお餅のようなフォルム。上端に“LOUIS VUITTON”の文字が刻まれることで、厚いケースの間延び感が解消されている。
広田
「薄い時計は立体感を与えないといけない。厚い時計は間延び感を与えてはいけない。そのアンビバレンスみたいなものをどうすればよいか。タンブールの面白さ、偉さは、ベゼルレスでケース上端に“LOUIS VITTON”の文字を入れたこと。普通ならケース下より上の径が小さいと間延び感が出てしまうのを、文字で上手く解消しました。

それと同時にこれならケースを厚くも薄くもすることができる。一見奇妙に感じたけれども、薄い時計に立体感をもたせ、厚い時計の間延び感を消す、上手いデザインだったのだな、と今は感心しています」

前田
「本当に特異なデザインだったんですね。こういうデザインの時計ってそれまでなかったんですか?」
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2002年の誕生以来、タンブールの全モデルはベゼルをもたない2ピース構造だ。
広田
「なかったと思います。……ああ、あえていうなら、アイクポッドがそうかな。しかしタンブールは、なおかつ、重心が低い。そのため装着感がいいんです。いずれにしても、タンブールはもともとのデザインがよかった。だから誕生から15年のあいだ変わることなく熟成に耐えられたのだと思います」
前田
「そこから次に、タンブール ムーンも誕生したわけじゃないですか。これまでのタンブールとは真逆のサイドが凹型の新デザインに。そしてルイ・ヴィトンは、これも同一のデザインコードであると。しかも、いままでのデザインもディスコンにしないで。つまり今後はこの2つのデザインが平行して作られていくことになるのですね」
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今年、新たに踏み出された次なる一歩

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新しい凹型ケースも上端に“LOUIS VUITTON”の文字を刻むことで厚いケースの間延び感を解消。また、これまでサテンとポリッシュの2つの仕上げを併用していたが、新ケースではサテンはメンズ、ポリッシュはレディスと、わけられているのも特徴だ。
広田
「タンブール ムーンで面白いのが、時計部門の責任者のハムディ・シャティさんが『遠くから見るとケースが膨らんでいるのか凹んでいるのかわからなかった』といっていたこと。それで『このデザインならタンブールの新しいバリエーションになれる』と思ったのだそう。そこが違うフォルムでありながら、同じタンブールのDNAを受け継いでいる、ということなのでしょう」

前田
「そういう意味でも、タンブールが『プロファイル』にフォーカスしたモデルであることは間違いないですね」

広田
「そう思います。袖口からチラリと見えたときに『格好いいね』という、最近の時計の流れに忠実に作られているんです。それと、この新しいケースの利点は、薄くできること。これまでの凸型ケースは厚くしたときに有利なのですが、薄くしたときの恩恵があまりない。対して、凹型は薄くしても立体感があるのが長所。だから今後は、厚いモデルは凸型ケース、薄いモデルは凹型ケース、という使い分けがされていくのだと思います」
前田
「そのほかのタンブールの長所には、どんなものがありますか? 僕はタンブールが、どんなモデルでも一目でタンブールだとわかるのが、とても凄いと思うんです。そんな『一目でわかる』時計は、全時計ブランドのなかでも十指に満たない。タンブールのデザインって、やはり傑出していると思うんですよね」

広田
「まったくそのとおりですね。そしてその大きなポイントが、先ほども述べた、ベゼルレスという点。それにより大きくなったダイヤル面に、ルイ・ヴィトンならではのデザインを落とし込んでいます。だからこそ一目でそれと分かる時計が完成したんですね。タンブールは、横から見ても、正面から見ても、個性が際立っています」
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正面からも、横からも。無二のデザイン

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今年、発表された新型ケースのGMTモデル。先端にイエローの三角形をつけた針で24時間表示で第二時間帯を示す。「タンブール ムーン オトマティック GMT ブラック」自動巻き、SSケース(41.5mm)、50m防水、ダミエ・グラフィット キャンバス ストラップ、63万6000円/ルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)
前田
「あともうひとつ、重要な点がベルト(ストラップ)。ルイ・ヴィトンのアイコンであるモノグラム・モチーフやダミエ・パターンを使うなど、これも一目でわかるデザインにしているのが凄い。ベルトにアイコニックなモチーフを入れるというのは、ほかの時計ブランドにはできないこと。これもタンブールの大きな強みですよね」

広田
「絶対そうだと思います。正面から見て格好いいのは、まずはベゼルとかダイヤルとか針ですけど、より面積の広いベルトへ自然と目が行くじゃないですか。そうすると、ベルトに個性のあるタンブールは圧倒的に有利。多分、タンブールはそれを最初からかんがえていたのでしょうね」
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ワンタッチで交換可能な新型ストラップは男性用30種類をラインナップ。従来のタンブールにも付けることができる。手前から、アリゲーターストラップ、モノグラム・エクリプス キャンバス ストラップ、ラバー ストラップ、カーフレザー ストラップ、アリゲーター ストラップ/すべてルイ・ヴィトン(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)
前田
「そして今年はベルトがワンタッチで交換できるようになった。しかもその新しいベルトがこれまでのモデルにも付けられて、だからタンブールの優位性はさらに広がっていくことになる。そんなふうにケースとベルトだけで充分に個性が出せて、ある意味、アクセサリーのように楽しめる時計って、タンブールぐらいじゃないですか?」

広田
「まさにタイムレスな時計。そういえると思います」
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広田雅将

1974年生まれ、大阪出身。時計専門誌『クロノス日本版』編集長。サラリーマンを経て2004年からフリーのジャーナリストとして活躍し、2016年より現職。関連誌含め連載を多数抱える。また、一般・時計メーカー・販売店向けなど、幅広い層に対して講演も行う。

高級腕時計専門誌クロノス日本版[webChronos]

■お問い合わせ

ルイ・ヴィトン クライアントサービス/☎︎ 0120-00-1854

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