2020.05.25

VOL.03「どこまでも繊細な人間の善悪」

善意のつもりのひと言がアダとなる時

世界のラグジュアリー人脈に通じ、社交界の裏事情にも詳しい謎の有閑マダム、カトリーヌ10世さんが、日本の男性諸氏が陥っている、ファッションと恋愛の無自覚・無意識の怠慢に覚醒を促し、読者を洗練へと導く連載です。

CREDIT :

文/カトリーヌ10世 イラスト/ユリコフ・カワヒロ、林田秀一

謎の有閑マダム、カトリーヌ10世さんが、日本の迷える男性諸氏を洗練へと導く連載。今回のテーマは……。

■Theme03「どこまでも繊細な人間の善悪」

みなさまごきげんよう。社交の達人のフリをしてふるまい指南をしているわたくしにも、痛恨の失敗の経験はいくつもあります。

あるパーティーで、上着丈が長いスーツを着ている男性がいらっしゃいました。シャンパンを2〜3杯いただいて気分が緩んでいたこともあり、雑談のノリで言ってしまったのです。「上着の丈をあと15㎝ほど短くすると、とてもバランス良く見えると思いますよ」と。
その方は無言で、しかし、翌朝、SNSに次のような書き込みをなさいました。「人の事情も知らないでファッションチェックをするものじゃない。世間でいうバランスはどうか知らないけど、僕のスーツは友人のテーラーがスペシャルな物語を込めて作ってくれた特別な一着なんだ。上着丈が長いことにも意味があるのだ」と。

全身から冷汗が出る思いで、すぐに平謝りしたことは申すまでもありません。ご寛恕いただけたかどうかはいまだに不明ですが、たとえ表面上、こうすればもっと良くなるように見えても、人にはそれぞれ背負う事情があり、頼まれてもいないのに善意のつもりで助言など決してするものではない、ということを以後、心に堅く誓っている次第です。
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自分はそのように誓っても、“間違いの指摘”が飛んでくることは、どうにも避けられないようです。わたくしがSNSで気楽に書き連ねた文に対し、このうえなく丁寧な表現で“間違い”を指摘され続けることがありました。ごもっともですので、最初の頃は丁寧にお礼を述べ訂正をしていたのですが、あまりにもその善意の親切が続くと、次第に自分を責めるようになり、ついには恐怖を覚えるようになりました。

相手のためを思っての善意であり、親切から行われた助言であることは重々承知しているのです。強調しておきますが、善意からの親切は、むしろ、正しいことなのです。しかし、人間というものは、善意の行為をあまりにも多く受け取ると、その蓄積を負荷と感じ、ついには拒絶反応を起こしてしまう不条理かつ繊細な存在であることも、心しておかねばなりません。

ビジネス界隈では、“ギブする(与える)”人になれという教えが全盛です。それにはわたくしも全面的に賛成です。しかし与える量とタイミングには細心の注意を払わないと、ともすると逆効果になるという繊細な人間の心理に、「目覚めなさい」。

カトリーヌ10世

グローバル化が進む社交界事情にも通じる。密かな趣味は人間観察とコスプレ。好きな飲み物はモンラッシェ。日本ではほとんど知られていないある小国の女王とのウワサも!?

2020年1月号より

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