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2022.06.12

【第9回】「銀座 八五」(東銀座)

出汁をそのままスープに。「銀座 八五」は常識破りのミシュラン星獲りラーメン店

日本初の料理評論家、山本益博さんはいま、ラーメンが「美味しい革命」の渦中にあると言います。長らくB級グルメとして愛されてきたラーメンは、ミシュランも認める一流の料理へと変貌を遂げつつあります。新時代に向けて群雄割拠する街のラーメン店を巨匠自らが実食リポートする連載です。

CREDIT :

文・写真/山本益博

八五 LEON 山本益博
▲ 「銀座 八五」の中華そば1100円(税込)。
「ラーメンは限りなく自由な麺料理である」とつくづく思う。とりわけヴァラエティに富むのが、スープ。いまさらひとつひとつ分類するのがはばかられるほど、すでに紹介し尽くされた感がある。

だが、「銀座 八五」の中華そばを食べたとき、フランス料理の発想と技術から生まれた、鴨の香り漂うスープに感動したのは、私ばかりではないと思う。ラーメンでは欠かせない「タレ」を使わず、「出汁」をそのままスープにしてしまう発想は、これまで誰も思いつかなかった。

「八五」の中華そばを食べてからというもの、フランス料理の「出汁」とよばれる「フォン」「ブイヨン」を使った料理を気に掛けるようになった。
香味屋 LEON 山本益博
▲ レストラン香味屋のコンソメスープ。
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いままで、レストラン、とりわけホテルのメインダイニングでは、メニューに「コンソメ」は欠かせなかったのだが、時間と手間がかかるにしてはお客がそれを評価せず、高価にならざるを得ない「コンソメ」が次第に姿を消していってしまった。今、牛のすね肉や香味野菜で時間をかけて作る、美味しい「コンソメ」はどこのホテルのレストランでいただけるのだろうか?

街場の洋食屋でいまでも丁寧に作り続けている一軒が根岸の「レストラン香味屋」である。澄みわたった琥珀色のコンソメが香り高く、続いてサービスされる料理のプレリュードとして申し分ない。

このコンソメに麺を加えれば、たちまち「ラーメン」となる。六本木の「白土」では仔牛のコンソメに中華麺を使った一品が、コースに組み込まれている。フランス料理の古典をベースに「ラーメン」を作るユニークなレストランである。
白土 LEON 山本益博
▲「白土(シラト)」のコンソメラーメン。
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宮古島の孔雀ラーメンとグッチ オステリアのイタリア風ラーメン

沖縄・宮古島の「紺碧ザ・ヴィラオールスイート」のメインダイニング「エタ・デスプリ」で、3年ほど前「孔雀ラーメン」をいただいた。渡真利シェフがカツオ工場に願い出て「孔雀節」を作ってもらい、それを「ラーメン」のかえしに応用した。いま宮古島で害獣とよばれる「孔雀」を料理で活きかえらせた傑作の一品。麺は島原の素麺だった。
エタ・デスプリ LEON 山本益博
▲ 「エタ・デスプリ」の孔雀ラーメン。
最近、イタリア料理でも「ラーメン」に出会った。それが、銀座・並木通りに昨年誕生した「グッチ オステリア」。イタリア人シェフが茄子を発酵させて作ったというスープは、フランス料理でいうところの「フォン・ド・レギューム」(野菜の出汁)の応用か?  客の目の前でスープを流すとたちまち「ラーメン」が誕生する。店でもこの料理を「ラーメン」と呼んでいる。麺は勿論パスタ。シルクロードが結んだ縁?
グッチオステリア LEON 山本益博
▲「グッチ オステリア」の茄子やトマトを用いたイタリア料理「パルミジャーナ」とラーメンを組み合わせた「ラーメンになりたいパルミジャーナ」。
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中華そば単品でミシュランの星を獲得した世界唯一のラーメン!?

「銀座 八五」の中華そばのスープは、前夜、鶏や鴨の骨と野菜から出汁を取り、そこへドライトマトの酸味を足し、翌朝、プロシュートとゲランドの塩味を加えて調味したもの。極めてシンプルながら、滋味深い味わいで、添えてある具も、チャーシューとメンマと青葱のみ。

見た目はシンプルだが、フランス料理出身の松村靖料理長が発案した、とても質の高い「中華そば」である。食後には、冷たい「加賀棒茶」がサービスされ、口中を静かに洗い清めてくれる。
八五 LEON 山本益博
▲ 「銀座 八五」の中華そば850円(税込)。
昨年の「ミシュラン東京」2022年版で1つ星に輝いた。店のメニューが「中華そば」単品のみで星を獲得しているのは、おそらく世界中で「八五」1軒ではなかろうか?

この春から暫く店を閉めていたが、5月27日より営業を再開している。
※次回は6月26日予定です。
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八五 LEON 山本益博

銀座 八五

住所/東京都中央区銀座3-14-2 第一はなぶさビル 1F
営業時間/11:00~
※スープがなくなり次第終了
定休日/日曜、土曜(不定休)
Twitter/銀座八五(@ginza_hachigou)
 

● 山本益博(やまもと・ますひろ)

1948年、東京都生まれ。1972年早稲田大学卒業。卒論として書いた「桂文楽の世界」が『さよなら名人芸 桂文楽の世界』として出版され、評論家としての仕事をスタート。1982年『東京・味のグランプリ200』を出版し、以降、日本で初めての「料理評論家」として精力的に活動。著書に『グルマン』『山本益博のダイブル 東京横浜&近郊96-2001』『至福のすし 「すきやばし次郎」の職人芸術』『エル・ブリ 想像もつかない味』他多数。料理人とのコラボによるイヴェントも数多く企画。レストランの催事、食品の商品開発の仕事にも携わる。2001年には、フランス政府より、農事功労勲章(メリット・アグリコル)シュヴァリエを受勲。2014年には、農事功労章オフィシエを受勲。
HP/山本益博 料理評論家 Masuhiro Yamamoto Food Critique

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