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2021.12.20

京都を代表する古刹「仁和寺」が大人の旅心を刺激する理由とは?

久しぶりに観光客が戻ったこの秋の京都。世界遺産 仁和寺で行われた紅葉のライトアップイベントを訪れて贅沢な大人の旅を堪能しました。

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文/森本 泉(LEON.JP)

こんにちは、LEON.JPのモリモトです。
先日、ダイナースクラブが主催する「世界遺産 仁和寺 ライトアップ特別貸切拝観」という会員限定のイベントに伺ってきました。仁和寺と言えば春の御室桜(おむろざくら※)と並んで秋の紅葉が美しいお寺としても有名ですが、この日は見事に色づいた境内を舞台に金堂・五重塔・二王門をライトアップして貸し切りで拝観ができるという特別な趣向。まさにこの時季、この晩限りの贅沢な時間となりました。

コロナによる長い蟄居生活を経ての久しぶりの旅、それも大好きな京都ということで心躍る時間となりましたが、とりわけ仁和寺は個人的な「推し寺」でもあるので、思いもひとしおです。
※御室桜は京都で一番遅咲きと言われる桜で丈が低く花弁が厚いのが特徴。
では仁和寺の何がすごいのか?  そのあたりを少々ご説明させてください。京都には約2500の寺院がある(※)そうですが、なかでも仁和寺はかなり特別なお寺です。同じ世界遺産と言っても、金閣寺や清水寺、二条城のような人気ランキング上位の寺とは違って、いつ行っても空いています(笑)。いや、空いているというか、境内だけでも3万坪、借景となっている裏山も含めると15万坪という途方もない広さに施設が散在しているゆえ、混みようもないのです(春の御室桜の時期はそれでも人が多いですが)。
※平成26年経済センサス - 基礎調査(総務省)によると京都府の寺院は2446事業所。
▲ 五重塔(重要文化財)は上層から下層にかけて各層の幅にあまり差が見られない姿が特徴。
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その広大な敷地の中に金堂(国宝)があり、五重塔(重要文化財)があり二王門(重要文化財)があり、素晴らしい庭園(国の名勝)がある。しかも境内を散策するだけなら自由! なんと太っ腹なことでしょう。私などは、大人の京都旅にこちらほどふさわしい寺はないのではと密かに思っています。人ごみの中、列を作って拝観するのは若者にお任せして、大人の旅はもう少し余裕をもったものでありたい。そんな思いにこの寺はすべてを備えて迎えてくれるのです。
そしてもうひとつ。仁和寺が特別であることの大きな理由はその来歴にあります。この寺が創建されたのは平安時代前期の888年(仁和4年)。1100年以上前ですよ! 菅原道真公を登用したことでも知られる第59代宇多天皇が、先帝の遺志を継いで創建。宇多天皇は後に出家して法皇となり、寺内に住んだことから、この地は御室御所とよばれ、以降、代々皇室から門跡(住職)を出してきました。

このように皇族や公家が住職を務める寺院を「門跡寺院」と呼びますが、仁和寺はその走りであり、天皇家ゆかりの特別な格式をもった寺院とされてきたのです。
▲ 参加者は寺の正門となる二王門(重要文化財)を入ったところで受付。二王門は阿吽の二王像と内側に師子狛犬を安置する。
その後15世紀半ばまで、寺は長きにわたって栄えましたが、室町時代の応仁の乱で伽藍のすべてを焼失。それでもさらに170年を経て、江戸時代、3代将軍徳川家光の治世に幕府の支援を得て、1646年に伽藍の再建が完成、現代に至るのです。なんともドラマティックな運命ではありませんか。

当時、幕府がこの寺の再建のために用意したお金は27万両。現代のお金に換算すると約300億円にもなるそうです。しかも大工頭には家康公を祀る日光東照宮の造営も任された中井家があたったとか。そこまでの庇護を得たのも、この寺が天皇家と縁の深い特別な寺院であったからこそでしょう。
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そんな歴史もあって、仁和寺には多くの見るべきお宝があります。二王門をはじめとした建造物のほとんどは370年前の江戸初期のもの。特に金堂は当時の京都御所の紫宸殿を移築したもので現存する最古の紫宸殿となります。また、霊宝館などに所蔵された宝物の中には応仁の乱の災禍を免れた平安時代の物もあり、国宝12件88点、重要文化財47件1678点、他に未指定の物も含めて約10万点の寺宝を所有しています。非公開の物も多く、一部は霊宝館で公開されていますが、まだまだ調査の済んでいない寺宝の中には国宝級の大変貴重なものも眠っていると言われています。
この日のイベントでも通常は非公開の国宝・金堂内部が開放され、参加者はご本尊・阿弥陀如来坐像の前でお寺の執行長による法話を聞くことができました。また、同じく金堂内の壁に370年前に描かれ、2018年に初めて公開された色鮮やかな五大明王壁画も文字通り目と鼻の先の距離で見せていただくことに。これに先立って仁和寺御所庭園の中心、宸殿と南北の庭園、書院の拝観に加え、宸殿においては、仁和寺に代々伝わる御室流華道のいけばなデモンストレーションが見られるなど、至れり尽くせりの特典がありました(※)。
※参加プランによって体験できる内容は違います。
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それぞれに物語のある数多くのお宝や施設を、ライトアップされた美しい紅葉とともに楽しめる今回のイベントを体験して、改めて「大人の旅」について考えてみました。例えば海外のリゾートで絶景ビーチを独り占めしながら何も考えずに過ごす旅もよいけれど、今の自分は癒しを求めるより、こんな知的好奇心を満たしてくれる刺激的な旅がより魅力的に感じられます。

京都をはじめとした歴史のある観光地を旅するなら、場所の歴史や謂れを知っておくことで、その楽しみはより大きく深くなります。旅は非日常の体験であることに変わりはないけれど、知的冒険要素が加わることで、それはよりストーリー性を増して面白くなる。これぞ大人の旅の醍醐味ではないかと思うのです。仁和寺はその意味でも実に刺激的で多くの魅力を秘めたスポットなのです。
さらに仁和寺が面白いのは、例えば1泊素泊まり100万円の宿坊という驚きの企画をすんなり実現させてしまうところ。主に海外の富裕層向けのサービスだそうですが、ただ泊まるのではなく広大な境内を使った日本文化体験を提供するという発想が面白い。また今回のダイナースクラブとの取り組みもそうですが、他にも世界のラグジュアリーブランドや一流の企業と組んで、積極的にイベントを行うなど、他のお寺とはひと味違う試みを次々と実施しています。

京都に限りませんが観光立国を目指す日本にとって、観光と史跡の保護の両立は大きなテーマですが、そこに至るアプローチの方法はさまざまです。とにかく客の数を増やすことに腐心しているところもあれば、仁和寺のように観光の質にこだわって、他ではできない体験を積極的に提供しようと工夫を凝らす寺院もある。
▲ 仁和寺の瀬川大秀第51世門跡(右)と、今回のイベントを主催したダイナースクラブカードの五十嵐幸司社長(左)。ふたりの前のテーブルは寺院内の観音堂を修理した際に出た寛永時代の古材を利用したもの。木材自体は1000年近く前のものらしい。それもまた寺の伝統と文化を現代に生かして後世に伝えていく作業の一環と瀬川門跡。
「伝統とは革新の連続である」と某有名和菓子店の社長は言いましたが、時代を超えて人々に信頼され愛され続けることの困難は寺院とて同じこと。仁和寺の瀬川大秀第51世門跡は「この寺の務めは大切なものを守りながら、その時代にあった表現方法を工夫し、今生きている方々に経験を通じてきちんとお伝えすること」と仰っていました。

一過性ではなく何百年を見据えて、長い時間の流れの中に身を置きながら、柔軟な姿勢で今なすべきことを考えるというそのスタンスは、とかく近視眼的になりがちな自らの仕事観にとっても、大いに刺激となるものでした。

■世界遺産  総本山 仁和寺

住所/京都府右京区御室大内33
拝観時間/9:00-17:00(12月~2月は16:30まで)
TEL/075-461-1155
HP/https://ninnaji.jp

■ダイナースクラブ
ダイナースクラブでは、今回のイベント以外にも「ここでしか、見つけられないものがある。」のブランドスローガンのもと様々な価値のある文化体験イベントを提供しています。
●公式サイト/https://www.diners.co.jp/ja/index.html
●世界遺産 仁和寺ライトアップ特別貸切拝観 動画
https://www.youtube.com/watch?v=cwFJsr2JMe4

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