2017.10.23

“時計は技術と伝統と芸術の結晶”を掲げる「A.ランゲ&ゾーネ」の戦略とは

文/前田陽一郎(LEON.jp編集長)
去る9月中旬、フィレンツェで世界屈指の時計ブランドであるA.ランゲ&ゾーネにより、世界各国からゲストを招いた盛大なパーティが開かれた。
 
また、パーティに合わせたプログラムには、フィレンツェが誇る職人たちの工房見学とワイナリーのツアーまでが組み込まれ、技術と伝統を巡る旅さながらの3日間となった。
ご存知だろうが、A.ランゲ&ゾーネはドレスデンを本拠とするドイツのブランド。そんなブランドが、なぜイタリアの芸術と職人技術の中心都市フィレンツェでイベントを開くに至ったか。それはドイツの質実剛健なモノ作りのDNAとイタリア的な美と伝統へのアプローチこそが、A.ランゲ&ゾーネであるという同社の宣言であり、ここで発表されたふたつのモデルに纏わせるべきストーリーだった。

発表されたのは2013年にはじまり、同社の熟練職人による手仕事の粋を集めたハンドヴェルクスクンストの6作目となる「1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダー "ハンドヴェルクスクンスト"」と、人気の「ランゲ1」「サクソニア」それぞれ手巻き、自動巻モデルのブルーダイヤル仕様。
まず、今回の目玉ともいうべきモデル「1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダー "ハンドヴェルクスクンスト"」は、そもそもその存在自体がA.ランゲ&ゾーネが誇るものづくりの集大成であると同時に、工芸美ともいうべき技巧が施されたシリーズ。その最新作となる同モデルは 、仕上げ装飾、エングレービングおよびエナメル焼成をそれぞれ別々の職人が担当し、工芸美をさらなる高みに引き上げるため、途絶えていた技法をよみがえらせ、希少な技法に挑み、斬新なアイデアを出し合うことで完成した意欲作だ。
 
出色なのはムーブメント裏側のサファイアクリスタルを覆う裏蓋で、ここに再現された月の女神ルーナと周囲のサークルは、レリーフ技法とトランブラージュ技法を駆使して浮き彫りにし、そこに青い釉薬を焼き付けた星と雲で縁取られている。
 
ちなみに、この「1815ラトラパント・パーペチュアルカレンダーハンドヴェルクスクンスト」は世界限定20本。日本で目にすることが今後あるかどうかすらわからない希少なモデルであることを加えておく。
複数の複雑機構を同時に搭載するという技術面での意気込みは、芸術的なムーブメントの装飾にも。洋銀製の輪列受けの表面に見られるきめ細かな粒状感は、往年の懐中時計のムーブメントの仕上げ装飾に倣ったもの。各所にエングレーブされた星々に、職人の手作業が光る。部品数631個。20本限定。 直径41.9ミリ。ホワイトゴールド製ケース。
もうひとつの重要な発表は「ランゲ1」「ランゲ1・デイマティック」「サクソニア」と「サクソニア・オートマティック」という同社を代表するモデルにブルーの文字盤を冠した「ブルーシリーズ」が加わるということ。もちろんブルーは、近頃の時計界を席巻するトレンドカラーを纏ったスタイリッシュなモデルだ。
 
 青は、古くから芸術家にインスピレーションを与え、自然科学者を幾度も研究に駆り立ててきた色。かのレオナルド・ダ・ヴィンチは、空と遠方をイメージさせるブルーを光と闇の混合色であると書き残している。
 
そう、ここに登場するレオナルド・ダ・ヴィンチこそ、フィレンツェが誇る天才であり、今回発表された「ブルー」を共通色とする両モデルをなぜドレスデンではない場所で発表した狙いの核とも言える。
(左から)ランゲ1、ランゲ1・デイマティック、サクソニア、サクソニア・オートマティック。 ダイヤルはいずれも、シルバー無垢に深いブルーの亜鉛プレート加工を施したもの。 ホワイトゴールド製ケース。ゴールドの針とアプライドインデックスはロディウム仕上げ。ダークブルーの手縫いアリゲーターベルトにホワイトゴールド製ピンバックルを装備する。
ところで、今回のワールドプレミアに主に招待されたのは時計ジャーナリストではなく、世界各地の著名インスタグラマーたちとデジタルコンテンツをもつライフスタイルマガジンのエディターたち。
 
正式なコメントではないながら、ヴィルヘルム・シュミットCEOは今回のイベントを「A.ランゲ&ゾーネの時計作りの姿勢が変わることはありません。けれども、コミュニケーションの方法は時代に即して柔軟であるべきだと思っています。また、我々が作る素晴らしい時計をなるだけ広い世代、広い地域に知っていただきたいと思っています」と話してくれた。
 
技術の粋を結集したモデルに、時代が求めるスタイリッシュなモデル、それらをストーリー性の高いプレゼンテーションで表現し、柔軟なデジタルコミュニケーションへのコミットメントで拡散する姿勢は、今後の時計ブランド各社が向かうひとつのモデルケースとなりそうだ。

A.ランゲ&ゾーネ

お問い合わせ/☎03-4461-8080
URL/www.alange-soehne.com/ja/

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