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トリニダッド ビヒア

今月の一本トリニダッド ビヒア

Trinidad Vigia

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4400円(1本)、5万2800円(12本)㉄LA CASADEL HABANO by CIGAR CLUB ☎03-3583-7130

彼女とキスをするようにシガーにくちづけをしてみたい

「口当たりがいい」。これは味覚を表現する常套句です。中身が同じでも、グラスや茶碗の口当たりによって味覚が大きくかわることを、私たちは直感的に知っています。しかし、よく考えるとグラスや茶碗のエッジに触れるのは単なる口ではなくて、くちびるなんですよね。そう考えると、くちびるは味覚の重要なセンサーでもあるわけです。ところが「口当たり」とは、味わいの濃淡をイメージする場合もあるから紛らわしい。僕は、旨い不味いを論じる時に、「口当たり」と「くちびる当たり」を分けて考えるべきだと、常々思っています。その最たる例が、シガーです。シガーでいう口当たりには、くちびるでの触感の心地よさと、けむりを舌でころがす心地よさの双方があるからです。だから、旨いシガーを選ぶコツは、吸い口のくちびる当たりの良し悪しの判断もあるわけです。

シガーには多種多様の吸い口の形状があるのは、人の好みの幅に、対応しているからなんです。例えば、今月の一本は好例ですね。吸い口を、よ〜くご覧ください。小さな尻尾みたいなのが飛び出していますよね。これ業界用語でいう、いわゆるピッグス・テイルというもの。豚の尻尾のようなものは、昔ながらの熟練の手巻きの手法のひとつです。「吸い口をハンドメイドで丁寧に仕上げていますよ」という職人芸の証でもあるのです。こういうシガーは、僕の経験から言っても、くちびる当たりがすこぶるいい。ちなみに、このシガーは、もともとキューバ国賓のための特別なブランドで、いまでも一本ごとに丁寧な手仕事で仕上げられています。彼女とのファースト・キスの、あの胸の高まりを想像しながらの一服は、さぞかし旨かろうと思うのであります。

PROFILE

中村孝則●コラムニスト
世界各国を独特の視線で読み歩き、さまざまなメディアでラグジュアリーライフを提案。

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