Drivers’ LEON

プロモーションビデオからクルマを語る

PVを紐解くとクルマの
新たな価値が見えてくる

PVを紐解くとクルマの新たな価値が見えてくる

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PVを紐解くとクルマの新たな価値が見えてくる (1/2)

スポーツカーはサーキット、セダンはオヤジひとり、ミニバンは家族……。
といった具合に、クルマのTVコマーシャルはほぼ定番化されていたように思う。けれどここ数年の
各自動車メーカーが手がけるプロモーションビデオが実に興味深いのである。
新車のプロモーションや企業CMなど、今回はPVの世界をキャッチアップする。

不良を前面に押し出すジャガーのPVは素敵だ

クルマの広告は、ひとつのアートとして楽しめる。1960年代、F1やルマン24時間レースなどで、レースカーが車体をスポンサーの企業イメージに合わせて塗ったのは好例だ。タバコのJPSカラーのロータスや、石油のガルフオイル・カラーのポルシェなど、美しさすら感じさせるほどだ。モータースポーツでの広告は、てっとり早くクルマのイメージを消費者に訴求する手だてである。しかし日本ではもっと捻った表現が好まれてきた。テレビコマーシャルを例にとると、タレントの大々的な起用は日本ならではの戦略といえるだろう。その背景には巧妙な仕掛けがあって、タレントのイメージを援用することで、その車種のターゲットを明確化している。

例えば30代前半のママタレントが出てくるコマーシャルを観ると、同じような立場の女性消費者が“私は(歳もポジションも近いから)このクルマを買うのが正解なのネ”と強く納得する。逆にこのイメージづけが上手くできていないモデルを乗っていると、“なぜこのクルマを買ったの?”と隣人や友人から質問されることになる。この質問が、実は多くの日本の消費者のもっとも苦手とするところなのだ。

けれど、もっとクルマに関心のあるオヤジたちは、海外での凝ったイメージ広告を観たほうが、“これはオレのためのクルマだ”と思えるはずだ。メーカーと消費者の価値観の共有こそが、クルマへの興味につながるのは、欧米では当たり前のことである。このところ、日本でも目にする機会が多くなったのは、そんな高級ブランドのコマーシャルだ。馬力や加速よりも、全体のイメージの訴求に軸足を置いたコマーシャルなのだけれど、それがめっぽう楽しめる。

例えば、ジャガーがFタイプ・クーペで展開している「グッド・トゥ・ビー・バッド」というキャンペーン。このPV(プロモーション用ビデオクリップ)が傑作で、アウトレイジよろしく、悪役のオンパレードである。プライベートジェットからFタイプに乗り換える悪役①、それをジェットヘリで追う悪役②、そしてロンドン市内でのチェイスのあとたどりついた邸宅でふたりを迎える悪役③。仕掛けも大がかりで、映像も凝っていて、まるでジェームズ・ボンドの映画のようだ。」

JAGUARアカデミー俳優も起用本格的なPVを展開

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英国の悪役をテーマにした映画のようなPVが話題。
アカデミー主演男優賞のB・キングズレー(中央)も起用し、夜だけの撮影だがFタイプ・クーペが魅力的に撮れている。

「ハリウッド映画の悪役はたいてい英国人が演じてきた」と、英国人俳優ベン・キングスレーが語り、スリルとスピードと品の良さと、それにひと筋縄ではいかない人格の複雑さといったものを、すべてポジティブな要素として、Fタイプの魅力と重ね合わせる。私たちと英国の関係は1613年に東インド会社のクローブ号が長崎・平戸に着いて以来だが、400年かけて知ったのは、英国はなんとわかりにくい国かということだった(と思いませんか)。そのイメージを逆手にとり、クルマの奥行きの深さを表現したのが、ジャガーのコマーシャルといえるかもしれない。「シネアドをかなり意識していますので、大画面、迫力のある音などが特徴です。コンピューターグラフィックスも駆使して、ハイテクイメージにも挑戦しています。

ストーリーも、悪役たちの主役争いや世代交代なども織り交ぜてシリーズ化しています」ジャガー・ジャパンの広報部は、大人の男の色気を全面に打ち出した「英国の悪役」キャンペーンの効果にポジティブだ。本国では、さらに今をときめく俳優のベネディクト・カンバーバッチが「グッド・トゥ・ビー・バッド」とつぶやくPVもある。バッドとは、格好いいという意味もあり、まさにちょい不良オヤジのことなのだ。

MERCEDES-BENZサブカルチャーにも積極的新しい層へ訴えかける

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メルセデス・ベンツの新型BクラスのPVには人気のヒップホップグループ、リップスライムが登場。
「この道を行こう」を歌う意外性も興味深い。

いっぽうで、強いブランドイメージをあえて壊すことで話題性を追求し、それに成功したのがメルセデス・ベンツAクラスとBクラスのPVだ。Aクラスは、現行モデルの発売に先駆けて2013年、「NEXT A−Class」という6分を超えるPVをウェブ配信して話題を呼んだ。「攻殻機動隊」などを手がけているアニメーション制作会社プロダクションIGと組んで、エヴァンゲリオンにも携わった貞本義行をキャラクターデザイナーに起用した。近未来の東京を舞台にしたカーチェイス仕立てだ。

メルセデス・ベンツ日本はそのあと、Aクラスベースの新世代SUV、GLAクラスは「スーパーマリオ」のビジュアルを取り込んだPVでまた話題を提供。さらに先頃は、BクラスのPVに日本のヒップホップグループ、リップスライムを出演させた。「サプライズを与えるような施策を実施し、既存のお客様はもちろん、新しいお客様とつながるコミュニケーションを目指しています」

メルセデス・ベンツ日本の広報担当者はそう説明する。実際、AクラスファミリーとBクラスのさらなる若返り化を図った同社の施策はサプライズだった。この2モデルをモールで販売するなど、よりカジュアルなマーケットを狙う同社。共感をもってもらえるブランドイメージの訴求として、日本のサブカルチャーを選んだのである。Aクラスのアニメーションは、「公開から19日で200万再生回数を達成し、170を超える国と地域からアクセスがありました」(広報担当者)という。日本で従来の3倍以上の新規顧客の来場があったといい、効果と話題性の両方を、同時に達成したPVとなった。

文化という点で、レクサスも負けていない。2015年にイタリアで開催されたミラノ・デザインウィークに出展した「ア・ジャーニー・オブ・ザ・センシズ(想像を超えた感動を得るLEXUSとの旅)」というインスタレーションが賞を取ったように、デザインやアートをPVに使うことにかけては経験豊かだ。

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ハリウッドと異国の街レクサスの凝ったPV

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