カルチャー

「ギンザ シックス」をつくったオトコたち (1/3)

「ここでは体験など、提供しない」。場やモノそれ自体が個性と主張を持って、人々に体験を提供するいわゆる“体験型”の施設やサービスが主流となりつつある今、「ギンザ シックス」のインテリアデザインを担ったグエナエル・ニコラ氏は迷いなくそう語る。「あるのは『ギンザ シックス』というただの“場”だ」。

関わったクリエイターが口々に「第一に“場”である」と言い切るこの建造物を、ニコラ氏は、100年先も古さを感じさせないランドマークとして、そこに存在し続けるだろうと予見する。日本、そして世界の注目を集める巨大な“場”の誕生に関わった人々は、果たして何を信じてこの歴史的プロジェクトを成し遂げたのか。グエナエル・ニコラ氏、新素材研究所、観世清和氏の3者の視点から、一言に商業施設とは言い切れない、「ギンザ シックス」の魅力に迫る。

■五感を呼び覚ます場としての「ギンザ シックス」

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「どう、柔からいでしょう」。上りのエスカレーターで目の前にいたグエナエル・ニコラ氏が、こちらに振り返ってそう言った。20日のオープンを数日後に控えたプレス内覧会でのことだ。

「光と素材のバランスがすごくいい。吹き抜けの天井には和紙をあつらえて、上から注ぐ光を全体に優しく透過している」。そう言って、彼は天井を指差した。「ここを見て。壁や床の素材もそう。木材や金属なんかの異素材がバランス良く配置されているから、長くいても疲れないでしょう。全体がとても柔らかいんです」。

そして、エスカレーターが上りきると、パッと視界が明るくなった。「人間にもリズムってあるんですね。緩急が大事。エスカレーターや、エレベーターホールなんかは、少し一息つきたいから、光はトーンダウンする。人間のリズムに合わせて建物の方が変化する。だからここにいると、なんとなく気持ちがいいでしょう」。

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この会話の数十分前に、彼のオフィシャルトークがあった。プレス関係者を前に、自身が担った「ギンザ シックス」のインテリアデザインについて、詳しい解説を行ってくれたのだ。

「この建物は、訪れる人々に特定の体験を提供するような自己主張はしない。ここでは、ただ人々のリズムにピタリと合う自然な流れがあるだけだ。ここはただの場に過ぎない。何か体験のようなものがあるとすれば、それは人々の中に初めからある感覚を呼び起こしたに過ぎない。自然と何かに出会い、自然と感情が湧き上がる場。それが我々の作りたかった『ギンザ シックス』です」。

実際に「ギンザ シックス」を訪れた方は、あの何とも言えない居心地の良さを実感したのではないだろうか。偶発的に生まれる店やモノとの出会い、自発的に湧き上がるそれぞれの感覚は、決して偶然の賜物ではない。中央の大きな吹き抜け、壁の素材、柔らかな光のトーンなど、すべてが人の自然な心の流れを促すべく意図されているのだ。

「商業施設に必要な最後のレイヤーは“人”です。まずは、周辺で暮らし働く人々に愛されてほしい。その結果、より外の、より多くの人々に愛される場となっていくはずなのです」。そう、グエナエル・ニコラ氏は語った。

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「名馬を藁屋に繋ぎ止めたる風情」の「粋」

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