モテたい背中に愛の16文キック♥

銀座と下北沢の消えゆく本屋たち

冨永麻由
ウェブ担当。オヤジにかまけて日々妄想と仕事に励む。

つい先日、代官山蔦屋書店で行われたトークイベントにお邪魔してきました。「東京×編集術」をテーマに、『BRUTUS』編集長の西田善太氏、「本屋 B&B」の経営をされているブック・コーディネーターの内沼晋太郎氏、明治大学の専任講師である南後由和氏による対談でした。

話の途中でハッとして慌ててメモを取ったので、果たしてこれが西田氏の体験談だったのか、本の引用だったのかは明瞭ではないですが、関連書籍と編集の仕事について大変興味深い話があったのでご紹介を。

「2008年に秋葉原で通り魔事件が起こった時、その事実をまったく呑み込めなかった。一体あれが何だったのかも、なぜ起こりえたのかも分からず、ただ不気味で底知れない恐怖だけを感じていた。おそらく、あれをしまうべき引き出しが自分の中になかったのだろう。それで、本を読んだ。何冊か本を読むことで、ようやくあの事件を自分の中にしまい込める引き出しができた。

そこで読んだキーとなったいくつかの本が関連書籍であり、その先でそれぞれの引き出しができるよう導くのが編集の仕事だ。」

社会を生きる人々が抱える問いや漠然とした不安、心のしこりを“取り除く”のではなく、それをしかるべき“引き出しにしまって”生きられるよう、必要な本があり、導き手としての編集者がいる。なんだかいいなあと思いました。

その翌日、内沼氏がブック・コーディネートを手掛け、対談の中でも紹介された「本屋 EDIT TOKYO」を覗いてきました。

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こちら、銀座5丁目のソニービルになんと本日、3月31日(金)まで限定オープンしている書店。立ち寄るだけのつもりが、つい長居をしてしまったのは、本の並びがとても魅力的だったからでしょう。著者別でも、ジャンル別でもない、各棚には何らかの「引き出し」が見つかるよう、意図して慎重に選ばれた本たちが並んでいました。

そして、一冊の本に目が留まりました。

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この本は、私にとってはなんとも思い出深い本で、数年前におよそ5年をかけて出会えた一冊です。10代の終わりに、「退屈ってなんだろう。なんでこんなにずっと退屈なんだろう」と、漠然としたいかにもティーンな問いを抱いてしまい、友人の誰に聞いてもこの「感じ」は理解してもらえず、本を読んでも腑に落ちるものはひとつもありませんでした。自分であらゆる仮説を立て、パスカルの『パンセ』まで目を通しましたが、思う場所にはたどり着けず。そして、「こんな無駄なことを考えるのはやめて、もっと実用的なことをちゃんと考えよう」とさえ思いました。

それから数年が経ち、たまたま立ち寄った書店でこの本に出会ったのです。表題を見て、「これだ!」と思ったのを今でも覚えています。家に持ち帰ったその本を、まばたきも忘れて夢中で読みふけりました。余白部分は、書きこんだ手書きのメモでほとんど埋め尽くされ、その代わりに私の中にはちゃんと「退屈」をしまうまっさらな引き出しができたのです。

あの時、なかなか出会えなかった本が、こうして誰かの温かい心によって意図を持って本棚に並べられていると思うと、本当に嬉しくなりました。

昨日、下北沢の「本屋 B&B」が移転するとのニュースが流れました。現在の物件を退去するだけで、移転先はまだ決まっていないとのこと。あの本棚がちゃんと守られ、人々をあたため続けてほしいと切に願います。

■本屋 EDIT TOKYO
URL/www.edit-tokyo.com

■本屋 B&B
URL/http://bookandbeer.com

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