フォトグラファー仁木岳彦のイタリア日記

テロとパリ

仁木 岳彦
上智大学新聞学科卒。旅の途中、イタリアにただならぬ縁を感じ、2000年からミラノ在住。撮影対象は興味の赴くまま、テーマはむしろ神々しい光の空気感。

パリに出張してました。ミラノからは飛行時間1時間半、
列車だとアルプス越えで7時間。調べてみると、
故郷とかち帯広から東京までの距離よりも、
ミラノとパリの方が近いんです。国境審査もなく
通貨も一緒ですから、国内移動のような気楽な風情の旅。

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で、初日、11月13日の金曜日の夜は、早めに宿に
戻ったものの、救急車両などのサイレンが妙に
うるさい夜だったんです。夜中近くにニュースで
知ったのですが、連続テロだったそうで。
滞在中に会う約束をしていたパリ在住の
イタリア人ジャーナリストの友人に連絡を
取ってみると、とてもテンパっていました。
出身地が近い事もあって親しくしている
彼の友人が、行方不明になっていて
探し回っているというのです。
被害者の身元確認にも数日かかった様です。
週末には、行方不明の従姉妹の写真と
メッセージを曲芸用の自転車にくくりつけて、
街を行脚している青年を見かけました。
死者だけでなく負傷者も含め、一時は多数の
行方不明者が出たことでしょう。

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そして残念ながら、友人の友人は、
コンサート会場での犠牲者のひとりと
なってしまったとの事で、さすがに今回は
友人を通して深い悲しみが伝わってきました。
宿の近くの地元の教会「Saint Jean Baptiste
de Belleville」では、キャンドルの光を
使った特別追悼ミサを捧げていました。

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あるデパートでは、映画「スターウォーズ」の
ウインドウ・ディスプレーをしていたのですが、
その横を、自動小銃を携えた本物の警察官が
パトロールしていました。写真では伝えられませんが、
この現場、勇ましいスターウォーズのテーマ音楽が
かかってるんっすよ。試しに音楽を想像して、
しばし写真を眺めてみてください。
「シュールリアリズム」とは、こういう光景の
事を指すんでしょうね。

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観光客が減っているとニュースで読みましたが、
テロ数日後からは、できる限り普段通りに
暮らそうと言うのがパリ市民の心意気だった様に
見受けられました。街歩きの目線では、
そんなには自粛ムードもなさげで、普通に
賑わっている感じ。

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日本人の人質がISISのメンバーに殺害された時や、
風刺雑誌シャルリーエプトへのテロの時などは、
ソーシャルメディアのタイムラインやニュースを
読んでも「許されざるテロ!」と言った
一方的な論調が圧倒的で、他の意見が言いづらい
ムードがあったと感じたのですが、
今回は様々な角度から色々な意見が飛び交っていた様子。

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「僕らが所属する西側諸国以外でのテロの被害」、
「空爆されている立場からの目線」、「移民難民の
社会統合の問題」、「祈りの是非」、「憎悪の連鎖や、
被害者家族が語る許し」、そして 「経済活動の
一環としての軍需産業のシステム」に至るまで、
興味深い話題の羅列。希望的な観測かもしれませんが、
市民達の意識が、一進一退しながらも小さくコマを
進めている様にも感じました。とてつもなく悲しい
出来事なわけですが、せめて長い目でみて
ポジティブな目覚めのキッカケのひとつであって
ほしいと思うわけです。国の標語でもある
「Fraternite’ (博愛、友愛)」の思想には、
一家言あるはずのパリ市民の集合意識は、
これからどこに向かうんすかね。

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自分のミッションにも、それほどは影響もなく、
ほぼ一週間の滞在の後、当初からの予定通りに
列車でアルプス越えの景色を眺めながら、
ミラノに帰ってきました。意外にも駅でも国境でも、
一度もチェックを受けませんでした。警察官は
その辺をウロウロしていたのですが、アジア顔は
顔パスなんすかね?逆に顔だけで怪しいと
思われるのってのも、大変なんだろうなあ。

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