フォトグラファー仁木岳彦のイタリア日記

憧れのフォトグラファー、星野道夫さんについて

仁木 岳彦
上智大学新聞学科卒。旅の途中、イタリアにただならぬ縁を感じ、2000年からミラノ在住。撮影対象は興味の赴くまま、テーマはむしろ神々しい光の空気感。

なぜ今、星野道夫さんかと言いますと、
日本で巡回展をやっている
最中らしいんすよ。
東京、大阪、京都はすでに
終わってしまいましたが、横浜での
巡回展はこれからだそうです。
http://www.michio-hoshino.com/info.html

01

星野さんは、アラスカに住んで
動物写真を撮っていた
日本人フォトグラファー。
完全に自慢なのですが、
一度お会いした事があるのです。
その時にサインして頂いた
写真集には1992年と
書いてありましたので、
自分は学生時代。星野さんは
動物写真家としてはすでに
国際レベルで有名な方でしたが、
自身の著作のベストセラー・
エッセー集「旅する木」や、
彼の事が描かれている
ドキュメンタリー映画の
「地球交響曲(ガイア・
シンフォニー)第3番」以前
でしたので、写真界以外では
そんなには知られた人では
なかったはず。

02

僕は地元が北海道なので、
春休みの帰省中、札幌で買い物を
していた時だと記憶しています。
あるデパートの最上階で、
彼の展覧会をやっている事を
ポスターで知りました。
星野さんが撮影する写真には、
それぞれの動物の性格だとか
家族の物語、悲しみや
喜びなど、彼ら動物の魂が
写っていて、他の動物写真との
格の違いを感じていました。
まだ、自分は写真を志すことを
決める前でしたが、興味津々で
デパートのエスカレーターを
上っていった感覚を思い出します。

ひと気のないその写真展会場には、
なんと星野さん自身がいて、
ゆっくりと話す事が出来ました。
「熊がいそうな地域でも、
銃を持って自然に入ると
良い撮影ができない。だから、
銃は持っていかない」という
内容を彼が語っていたのを
知っていたので、すぐに
その質問をぶつけてみました。

アラスカの写真でいっぱいの
展覧会場を背に、とても
嬉しそうに質問に
答えてくれたですが、その時の
星野さんの浮世離れした瞳に、
僕は釘づけになりました。
到底この世のものとは
思えないほどに、瞳が神々しく
澄みきっていて
「こんな人、見たことない。
人間には見えない」そういう
感じなのです。あんな経験は
未だにあの時一度きり。
星野さんの目が、映写機の
ように光を放っていて、
見た事のない世界を僕に
ジリジリと照射していたような
感じさえありました。今でも
その時のとんでもなく
尊いものに触れた様な感触を
思い出すだけで、なぜか感情が
揺さぶられるのです。

03

「やはり銃を持つと、動物を
見下した目線になってしまうからでは
ないでしょうか?」と、僕は自分の
仮説に基づいて質問したのですが、
「確かにそうかもしれませんね、
自分を安全な場所に置くことで、
生の自然を感じることが
難しくなってしまう、そういうことは
あるのかもしれません」といった
感じの経験第一な話を
してくださったと記憶しています。
「北海道はイイですね、
乾いているっていうのかな。
やっぱり北なんですね、千歳空港に
降り立った瞬間に感じるんですが、
アラスカの空気に似ているんですよ」
などと、他愛のない会話なども
交わしたのですが、そんな会話の
内容よりも、星野さんの存在感が
とにかく強烈で、心地良い
不思議な圧倒感がありました。

その4年後には熊に襲われて、
星野さんは人間世界より先の世界に
旅立たれたのですが、龍村仁監督の
ドキュメンタリー映画
「地球交響曲(ガイア・
シンフォニー)第3番」では、
亡くなった星野さんはクマの魂を
持つ男として描かれていました。
自分の守護神がクマであることを
知っていたと言うのです。
熊がクマを襲うという、
壮大なテーマを真正面から
描いていました。地球(ガイア)の
息遣いを感じる、これまた
オススメの映画です。

「あの星野さんの目は、
クマの目だったのかもしれない」。
その映画を見てから、
そう思う様になりました。
人間の目とは到底思えない
感じでしたからね。
もし、そうだとするならば、
熊と言う動物は、実は底抜けに
優しく純粋で素敵な
動物なのでしょう。
「熊は危険で獰猛な動物」という
イメージこそが、人間目線で、
我々本意のエゴが作りあげた
ものなのかもしれないのです。
一方で、テディーベアなどの
熊のぬいぐるみ、クマの
プーさん(Winnie-the-Pooh)の
アニメ、北海道土産の
木彫りの熊などは、
キャラクターとしてひたすら
愛されているわけですから、
よく考えると、僕らにも
二重のイメージがあるんですよね。

04

星野さんは、向こうの世界でも、
人間と動物の境界線を越えて、
旅していると想像します。
その境界線を越えたいと旅を続け、
もしくはすでに超えていたから
超人だったでしょう。
人間と動物の境界線上の
異次元に、神域みたいなものを
垣間見ていたのだと思います。

このページ「イタリア日記」と
関係ない事を書いているようですが、
振り返ってみると、今自分が、
イタリアに住んでいるのも、
星野さんと出会った事と
関係あるのかもなあと最近、
思うのです。外国に
住んでいる事に対し自問する時に、
星野さんを意識しないわけには
いかないのです。

05

友人に勧められて、彼のエッセー集
「旅する木」を読んだのは、
イタリアに来てからなのですが、、、
どうか皆さんも、その冒頭を
読んでみてください!
アラスカに移り住んだ過程が
書いてあるのですが、
マジ最高っすよ!
憧れの星野さんと自分を
比べるのは、本来ならば
遠慮するべきとは思いますが、
照れずに思い切って言うと、
僕もどこか似たような感じで
イタリアに惹かれ、何かに
押されるような、強迫観念とも
言えるような説明不可能な
強烈な思いを持って、ここに
移り住んだんすよね。

それぞれみんな、何らかの使命を
持って生きてんだろうなあ。
熱く語ってしまって、すいません。
星野道夫について
語り合う相手募集中。ではでは。

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