フォトグラファー仁木岳彦のイタリア日記

東へ! シベリアでの年末年始。

仁木 岳彦
上智大学新聞学科卒。旅の途中、イタリアにただならぬ縁を感じ、2000年からミラノ在住。撮影対象は興味の赴くまま、テーマはむしろ神々しい光の空気感。

「こないだ郵便配達人が、仕事中に熊に
遭遇したんだってよ。慌てちゃって、自転車を
雪道で滑らせて転んで、すってんころりんで、
走って逃げたんだとさ。しばらく走って
後ろを振り返ったら、これまたビックリ。
その熊が自転車に乗って遊んでやがる」
「ああ、そりゃ十分ありえる話さ。
この辺の森に返されるらしいからな。
ボリジョイサーカスの引退熊だろ?」

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そんなロシア小話にも笑わせていただきました。
妻の年末年始の帰郷に同行、シベリア
(ハンティ・マンシ自治管区)に行って参りました。

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日本では最も寒い地域の一つとされる
北海道十勝育ちの僕ですが、マイナス44度
(iPhoneの公式温度。軒先の
温度計では朝方マイナス47度まで
下がっていたらしい)も初体験。
「マイナスになりゃ、どんな温度も一緒だろ?」
なんて聞いてくる友人がいましたが、
そんな事は決してありません!!!
カラダへのインパクトの違いは、なんとなく
5度毎くらいに体感できるモノなんすよ。
それはプラスでもマイナスでも同じ事。
マイナス30度くらいまでなら、
厚着していりゃなんとかなり、マイナス
35度以下になってくると肌の出ている所の
凍傷の危険を感じ、マイナス40度以下だと
まぶたが凍って目を開けるのも一苦労など、
一部が機能しなくなってきます。

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空気中の水蒸気が凍って、クリスタル化して
光が乱反射するからか、空の色が何とも
不思議でした。シャガールの絵の色の
グラデーションは、これを大げさにした
モノなのではないか?と思った程に幻想的なんです。

色々とカルチャーショックを受けたのですが、
ひとつ的を絞って話すと、イタリアから行くと
とてつもなく「東」を感じる事なんすよね。
僕が訪れた限り、まずどこの家にいっても、
玄関で靴を脱ぎますしね。。。

で、ロシア語で「イクラ」と言えば魚卵の事だし、
「メンタイ」と言えば明太子の親魚のタラ、
「マンテ」と言えば肉まんの様な饅頭の事だそうです。
まあ、要するに北アジア文化圏って事なんでしょうね。
似た言葉は、偶然に見つけた例に過ぎず、
調べればもっと沢山あるはず。

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いわゆる欧米では、食事に出てくるスープは
多少ぬるく、音を出さないで上品に食べるのが
普通と言われておりますが、、、ロシアの
スープは、熱々に煮えたぎっているんっすよね。
一応、ロシアでも、ズルズルと音をたててスープを
すする事は、マナー的に行儀が良くないと
されてるらしいんすが、なんせ熱々なんで
フーフー、ハフハフ、ズルズルする以外に方法が
なく。実際、どうも家庭なんかでは、
多少すすってもOKな空気感なんすよね。
海外在住20年、アメリカでもイタリアでも
ズルズルは一度も聞いた事がなかったので、
なんともかんとも「東」というか「アジア」を
感じるわけです!!!
そんな熱々なモノを食べた後には、こめかみの辺りが、
ふっとリラックスするんすよね。僕的には
ベトナム料理や中華、日本の鍋料理などのアジア料理を
食べた後の満足感にも似ているわけです。

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キリスト教のロシア正教会では1月7日に
あたるクリスマスを家庭で盛大に祝う
習慣はあまりなく、新年正月の方を
より祝う様です。サンタ・クロースが良い子の
家に来るのも大晦日と聞きました。
ロシア版サンタ・クロースは、「極寒おじいさん
(デッド・マローズ)」と呼ばれ、孫でアシスタントの
「スノーガール(スネグーラチカ)」と二人で
協力して、プレゼントを配って歩くのだそうです。
それにしても、サンタ・クロースと似た文化が
共産党の宗教弾圧も生き抜いたという事でしょうか?
なんとも不思議っすよね。

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大晦日の夜は、ひと昔前の紅白歌合戦の様な
全世代が楽しめそうな番組が、テレビに
映し出されていました。なぜか日本の歌謡にも似た
旋律のソ連時代の懐メロ、それにロシアの
最新ヒットポップ、メーク濃い目のおねえキャラの
男性歌手に、モノマネの歌い手などが脈絡なく
歌って、踊って、、、、あと意外だったのが、
かなりの割合で、アメリカのノリノリのダンス曲を
ロシア人歌手が次々と歌うんですよね、、、
アメリカ文化はかなり、しっかりと
根付いてるみたいです。とにもかくにも、
お茶の間では、それを見ながら食べて呑んで、
歌って踊って、酔っぱらう訳なのでしょうが、、、

ただ、新年があける直前には、テレビが急に
静まりかえるんです。プーチンの短い挨拶を挟みつつ、
赤の広場の鐘の音でトーンで引き締めて、
新年に流れ込む感じ。除夜の鐘ではないので、
鐘は12時を指す12回しか鳴らないのですが、
それでも、なかなかの趣き。もちろん
「行く年来る年」程、清々しい番組では
ないのですが、パーティー番組と
パーティー番組の間の急なあの静寂は
「NHK」に迫るモノがありました。
この締め方なんかは、東方特有のモノなんすかね?
どうなんでしょうか? 欧米ではシャンパンなどを持って、
ダラダラとカウントダウン、花火中継と言ったノリが
普通な気がするのですが。。。

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あと、「2015年はヒツジ年だから、
カレンダーはヒツジの写真のカレンダーに
した」とか、そういう事が会話に
あがっているみたいなんです。
スノーガールと干支のヒツジがコラボしてる
ケーキも見かけました。ロシアでは
干支がなかなかの存在感なんすよね。

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アジアとヨーロッパが交わる場所というのは、
世界中に沢山あると思いますが、、、
ロシアも確実にそんな場所のひとつなのでしょう。
雄大なユーラシア大陸をまたいで、
極東アジアとヨーロッパの両方に接していますからね。

アジア風の容貌の人も沢山いて、僕も随分と
ロシア語で話しかけられました。
「知り合いのタタール人と似ている」と
言われました。日本語で言う所の韃靼(ダッタン)人。
どうなんすかね、実感湧きませんが。。。

シベリア鉄道辺りに乗ると、ヨーロッパから
アジアへのグラデーションを、カラダで
感じられるのかもしれません。
イタリアから日本に、陸続きで帰省できたら
面白いんだろうなあなんて、夢想している所です。

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