フォトグラファー仁木岳彦のイタリア日記

「天使の写真」を撮影したキッカケ、月との関連性

仁木 岳彦
上智大学新聞学科卒。旅の途中、イタリアにただならぬ縁を感じ、2000年からミラノ在住。撮影対象は興味の赴くまま、テーマはむしろ神々しい光の空気感。

多くのメッセージをいただいています。「魅入って、何度も見てしまいます」「癒されました」「何かと天使が語りかけてきますよ」「神々しくて、涙が、、、」「実は運気が上がりました!!!」などなど。ありがとうございます! 読者さんからの反応をいただくというのは、こんな喜びなのですね! 貴重な体験です。眠る前などに、パラパラっとめくる感じで、写真集を見てくれている方が多いみたいですね。観る瞑想。これからは、もっとシンクロニシティ(偶然の一致、必然の偶然)などが増えて、不思議な出会いが多発すると思いますよ!

「そもそも天使像をテーマにした、最初のキッカケってなんだったの?」と聞かれることも多いのです。そりゃ、動機を知りたいっすよね。写真集の後書きにシッカリ書いてあるのですが、僕が語るのと、さらりと読むのでは、熱気が違うでしょうから、喜び勇んで答えるのですが。。。まず、写真集「天使の写真」の終わりの方に一枚だけ、天使とは関係なさそうな写真があります。煙が充満する大聖堂祭壇の写真。

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2011年3月11日の東日本大震災には、イタリア人達も大いに気持ちを寄せてくれました。震災の翌週、ミラノのドゥオモ大聖堂にて「大震災犠牲者の追悼、そして残された者への励ましと復興を祈るミサ」を立ててくださいました。ミサはミラネーゼで満員御礼。祭壇には「平安」と筆された書が置かれ、合唱団は「ふるさと」を日本語で歌ってくれました。そして、なんとミサのクライマックスでは、驚いたことに、日本人の参列者のために、仏教のお寺などで行うお焼香をさせてくださったのです。教会にも、乳香(フランキンセンス)などの樹脂ベースのお香があります。普段は、重要なミサなどの前にお清めとして神父さんが、金銀細工が施された小さな球形のメタル製香炉などに入れて、振り回す感じで炊かれます。しかし、イタリアで一般信徒がお香に触れることはほとんどないらしいのです。日本に長く住んだ経験があるイタリア人神父さんが、日本人の祈りの習慣に関して口添えしてくださったそうで、その日に限って日本人が祈りを表現しやすいように、カトリック教会内で仏教式お焼香を実現したのだと聞きました。粋な心意気に感激ですね。イタリア人は、ある意味でいい加減な分、他の文化にも寛容な側面があるのかもしれませんね。日本人が列を作って、次々と慣れた仕草で、祈りを形にしていきました。樹脂ベースのお香は、もともと煙が多いのと、珍しいお香の儀式のせいで、普段の教会ではありえないほどに祭壇が煙に包まれ、みんな見とれていました。そんな西洋と東洋の祈りが交わっていた瞬間、「煙の中に舞い上がっていく天使を見た」という人の不思議な話をミサの後に聞きました。「そうか、あのミサは天使の出陣式だったのだ」と、僕は勝手に理解して、天使撮影の巡礼を決めたのです。だから、6年近くかかりましたが、一応僕なりの祈りの気持ちを形にしたのが、この写真集。最近、パラダイムシフトの途中なのか、なにかと世の中が揺さぶられている感じがありますが、世界中で天使たちが働いているように感じています。

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しかし、撮影巡礼を決めたとはいえ、心が折れそうになることもあるのです。「そもそも、元々ある芸術を写し撮ってるだけじゃん?」とか、「僕は楽しんでるけど、こんな写真見て喜ぶ人いるの?」とか、「この出版業界、冬の時代、どこの誰がこんな企画に興味を持ってくれるのかなぁ」なんて、、、。弱気になるというか、飽きそうになったりするわけです。しかし、そんな感情が襲っても、逆に動機を維持し続けるキッカケとなる出来事が起こったりもするもんなんですね。不思議なもんで、自分のお気に入りの写真が一枚撮れただけでも、相当な「押し出し」って効くんすよね。その一枚がコチラ。

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月と地球の距離が短くなり、満月が普段よりも大きく見えるスーパームーンだったある日の夕方、月と旧市街の街並みを絡めたお洒落な写真が撮れないかなあと、深く考えることなしにミラノの中心部に向かいました。市街地でもっとも空が広く開けている街の中心ドゥオモ広場に着いた時、なかなか良い感じの満月が低い位置に出ていました。同じ満月でもスーパームーンは、やはり特別に存在感があるものです。望遠レンズが装着されたカメラを三脚に載せて、ファインダーを覗いたところ、「まじか?」と目を疑いました。ちょうど王宮の教会の塔のあたりに月が出ていたのですが、なんとその突端に天使がいたんです!!! すでに天使像をテーマに決めた後でしたので、歓喜しながらの撮影となりました。「じっくり待機して、時間をかけて待っていたんですよね?」などと質問されることも多いのですが、実際は完全に逆。カメラを向けたら、そこに天使がいただけなのです。で、月って望遠レンズで覗くと強烈な速さで動いているんすよ。だから、「逆光だし露出難しいなあ」って段階露光しながら、慌てふためいてパシャパシャ撮影した写真なのです。

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こちらの写真が、だいたい同じ地点から撮った写真なのですが、大聖堂の尖塔の突端に黄金に輝く聖母マリア様がいるのは知っていても、大聖堂右手奥の王宮方面の尖塔に天使がいるとは、それまでまったく知りませんでした。ミラネーゼの友人たちも、まず知らない人がほとんど。しかも、実はこの天使像は風見鶏で、見るたびに違う方向を向いていることも、後で気がつきました。撮影時は方角的にもうまい具合に月と重なっていたわけです。「ということは、あの時、良い風が吹いていたわけか!」そう思うと、「こいうのって、俺しか撮れない写真だよな」とか、「天使から撮影依頼がきているみたいだよなあ!」などと、うぬぼれつつ自分を奮い立たせる動機の一枚になっていきました。「このスーパームーンの天使写真を表紙写真に!」と僕も著者として推薦させてもらい、出版直前の最後の最後に採用と相成りました。しかも写真の縁を黄金色(ゴールド)で箔押し。怪しく艶かしい光を放っていて、最高の演出っすよね。

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11月初旬に写真展と先行販売をさせていただいた阪急うめだのイタリアフェアーにて、そんな表紙撮影のストーリーなどを話していたところ、、、お客様のある方があることに気づいて教えてくれました。「(奥付に書いてある第1刷発行日の)2016年11月14日も、満月でスーパームーンなはずですよ」と言うではありませんか。調べてみると、68年ぶりに最大に接近するスーパームーンだったそうです。編集部も販売部も知らなかったそうで、これも必然の偶然だったのかもしれませんね。

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表紙デザインも発売日もスーパームーン絡み。「月と天使」は、どういう関係性があるのでしょうか。出版の締めの段階で浮上してきた「月のエネルギー」。月は女性性のシンボルなどとよく言われるようですが、気になります! いただいた感想やメッセージなどを読むに、読者の方が僕よりも天使に詳しい場合も多いので、何か感じて分かったら、ぜひとも教えてください! フェースブックのファンページもやっています。書籍には書かれていないエピソードや載っていない写真ものんびりとアップしています。
http://www.facebook.com/angelsbyniki/

これからは、「月のエネルギー」、もしくは「女性性って一体なんだろう、男性性との違いは?」などという自問自答が、僕の道しるべになりそうです。ところで、ファッションっていうのも文化的な文脈で眺めると、究極のところ、女性性と男性性の定義のせめぎ合いをやっているんすよね。なんたって、肉体に羽織るモノっすからね。

ところで、ちょい不良ながらも、照れずにさらっと女性性を理解し、女性を大切にできる側面もあるイタオヤ風男性って、相当モテるんじゃないっすか? って言うか、LEON誌面もすでにそういう方向性にいってる感じがするんすけど。。。男性誌でありながら、必ず女性モデルが写真に登場しますしね。モノ(商品)だけではなくて、コト(ストーリー)にフォーカスいている雑誌だからこそですね。せっかくなんでこじつけますが、LEON編集部が写真集「天使の写真」を手がけた理由も、そのあたりにあるんでしょうね!

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